横須賀美術館
東京から車で1時間30分ほどの距離にある横須賀美術館。その建築と美術館からの展望に惹かれて訪れてみた。土曜日の14時30分ほどに着いたけれど、あまり混んでいなかった。駐車場も割と空いていたので余裕を持って停められてよかった。
建物は透明で幾何学的。シンプルという言葉が似合うだろう。建物のなかを歩いていてなんだか落ち着く気分になった。丸窓から入ってくる光が優しかった。
展示されている絵画も良かった。圧巻された作品は白髪一雄(1924-2008)の『天敗星活閻羅』。いや、この絵の一振りの分厚さと迫力、どうやって描いたんだと思いましたが、やはり足を使って書いているようです。こちらの東京新聞の記事で紹介されているので、ご関心のある方は読んでみてください。
もう一つ、おお、すごいなと思ったのは内田あぐりさん(1949-)の『分水界』。これまた、よくこれだけのスケールの作品を描こうと思うなと思った。確かに、そう、何かが変わりそうな感じがする絵でした。なんだか違う世界に飛び立ちたくなりました。
いやはや、世の中にはすごい人がたくさんいますね。
そして個人的に一番好きだったのは山田正亮(1929-2010)の『still life no.43』。
1952年の作品だったから、山田はまだ22か23歳だ。インターネット上で探しても画像が見つけられないのでお見せすることはできないが、まさに、若き芸術家が住んでいそうな空間そのものが絵になっていた。あの絵の存在そのものから、芸術家の声が直接聞こえてきた。あの絵を見ただけで一つの小説が描けるだろう……そんなことを思っていた。
山田は生涯で5000を超える作品を描いたというのだけど、ちょっと、頭がおかしくないとできないことだろう。「絵画と契約した」と言ったそうだ。静物を描き続けていた頃の山田は、きっと、何か変わらないものがないのだろうかと希求していたのじゃないだろうかと思った。それが、何か私の心を打つものがあった。だから、絵の前のベンチに座ってずっと眺めていた。またそのうち見にいくだろう。
景色
そう、横須賀美術館は景色も素敵だ。エスカレーターか階段で屋上まで行ける。屋上からは東京湾が見渡せる。天気が良ければ東京湾の反対側の房総半島まで見渡せる。海を見つめたままぼーっと時間過ごすのもいいと思う。海を背に向けて、屋上と繋がっている公園に散歩することもできる。ちょうど紫陽花が咲いている季節で、小さな椅子に座って絵を描いている人の姿もあった。
お邪魔しなかったが美術館併設のレストラン『横須賀アクアマーレ』もとても良さそうだった。海を眺めながらパスタや魚料理を食べられるのは、とても、贅沢なことだろう。チラとみたお値段も良心的な感じがした。
そして美術館ではないが、美術館から海までは歩いて一分ほど。「観音崎ボードウォーク」という名前が付いているようで、甲板の上で海沿いを散歩できる。波は静かだったし、海の方面を向いたベンチも4~5ほど備えつけられていた。犬と散歩している人やランニングしている人、家族で仲良く遊んでいる人たちがいた。夕陽を見ながら、静かな波の音を耳にしながら、誰かと海を見つめながらベンチで話をする、なんていうのも、これまた素敵な時間の過ごしかたではないだろうか。