宋家の三姉妹 メイベル・チャン

渋谷の「Bunkamura ル・シネマ 渋谷宮下」で、メイベル・チャン監督の『宗家の三姉妹』を見た。渋谷駅からも近くて、いい映画館だった。6月にリニューアルしたばかりだそうで、「マギー・チャンレトロスペクティブ」が6月16日から7月13日まで続く。できれば毎日、見に行きたい。ウォン・カーウァイ監督の『花様年華』などもやっているので、見たことない人は是非。


映画としてはとても素晴らしかった。まず映像が美しい、音楽も美しい。映画館としての画面もそれなりに大きい方だと思う。日曜日の最終上映会は混んでもいなかった。

印刷業で財をなしたチャーリー・宋の3人娘である宗霞齢宗慶齢宗美齢の物語。なお慶齢は孫文、美齢は蒋介石と結婚する。いや、どんな家族やねん……と思うが、これがまた史実であることがすごい。


映画のプロットについては省略するが見て思ったことが3つあるので簡潔にまとめたい。

1つ目は時代が人をつくること。国家の政治が大きく変わる時代、革命の時代を生きるものは若いときから死に直面させられる。死を前にして、どう生きるのかという問いを突きつけられる。それが人を成長させる。何を守り、何を捨てるのかの選択を日々迫られる。20世紀の前半を若者として生きた人たちは、21世紀を若者として生きる人たちと、どうしたって人間としての凄みに違いが生まれるのだろう。宗家の三姉妹を含めて、もちろん孫文も蒋介石も、その評価は別として、これ以上にないほどに人生を生ききったのだろう。

2つ目はキリスト教を知らないといけないこと。宗家、孫文、そして蒋介石もキリスト教と深く関わりを持っていた。何もキリスト教徒になる必要はない。もちろん、なったって構わない。でもキリスト教を知らない限りは、この世を理解することはできないだろう。キリスト教を知らない限りは、目の前にある社会を理解することは不可能になるだろう。キリスト教を知らない限りは、世界がどのような力によって動かされているかは分からないだろう。

なぜ民主主義においては一人一票なのだろうか。どれだけ人間の屑のような生活を送っている輩も、日々を懸命に自らに厳しく生きているものも同じ一票なのだろうか。

それは神の前には人間の違いなど存在しないからだ。神の愛の前には、人間の違いなど無にすぎない。これが民主主義の根源にある。愛の思想が民主主義の根源にある。聖書を、新約聖書を読まない限り、新約聖書を理解しようと生きない限り、永遠にこの世の仕組みを理解することはないだろう。例え、それが一つの通過点に過ぎないとしても。

3つ目は、映画のラストシーンに出てくる、蒋介石の聖書に記されていた言葉。

革命とは愛である。また愛とは革命である

『宗家の三姉妹』

なぜ革命を起こすのだろうか。別に孫文や蒋介石に限った話ではない。何が人に革命を起こさせるのだろうか。それは苦しむ人への愛だろう。なぜ人が苦しまないといけないのか。なぜ焼身自殺をしてまで何かを訴えるのか。この世で苦しむ人を一人でも減らすために人は革命を起こす。信教の自由、言論の自由、投票の自由……これらの自由は、かつて苦しみを減らすために愛を生きた人たちのおかげで存在する。

そしてまた、愛はまた人を変える。愛の業火に燃やし尽くされた人は変わる。愛は人に革命をもたらす。愛は人に生き方を変えさせ、人生を変えるだろう。これは人間と呼ばれる存在が存在しつづける限り、永遠に変わらない真理であろう。


あと最後に、孫文と宋慶齢が2人で見つめ合うシーン。はい、とてつもなく素敵でした。愛は、愛で受け止められることを待っている。そんなことを思いました。

ということで7月13日まで、ル・シネマで「マギー・チャンレトロスペクティブ」。渋谷近い人はぜひ、足を運ばれることをお勧めします。